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前の話へ 次の話へ あらすじ アリス、霖之助に協力してもらって日本人形を作成。 完成のお礼に料理を振舞う(作ったのはアリスの人形)。 霖之助への好意を自覚した。 「ご馳走様。実に美味しかったよ」 「はい、お粗末さまでした」 食事が終わった後も2人の会話は途切れることはない。話題は主に今日完成した人形について。 どこどこが大変だった、あそこは割りとスムーズに行ったとアリスが語り、 その割には良くできていた、流石高名な人形遣いだと霖之助がほめる。 会話は収まる所を知らず、むしろさらにヒートアップしていく。 霖之助が人形を手に取って、細かい箇所を指で示しながら語り出し、アリスも霖之助の真横に腰を下ろして手元を覗き込む。 その状態で霖之助の講釈を聞いているうち、いつのまにか霖之助にしなだれかかるような体勢になっていることに気付く。 そのときアリスが感じたのは、拒絶でも喜びでもなく、驚きだった。 話に夢中だったとはいえ、自分がここまで無防備に他人に近寄っていることに。そしてその相手が男性であることに。 しかしその変化は忌避する類のものではない。むしろなんとなく心地よさを感じる変化と言えた。 こうなると気になってくるのは霖之助がどう思っているのかである。 こっそり様子を伺うが、霖之助のほうは気にした様子もなく口を動かし続けている。 別に霖之助を誘惑するつもりはない。 好意を抱いていることに間違いはないが、まだ積極的にどうこうなりたいというほどに強いものでもない。 それでも自分は女性で、彼は男性だ。こんなに近くに居るというのに、本当になんとも思っていないのだろうか。 そもそも自分から通っていたとはいえ、ここ数週間の間に何度も2人きりになることがあった。 それなのに、一度も自分はそういう目で見られなかったのか。 自分もついさっきまでそういう目で見ていなかったことを完全に棚に上げているが、まあそこはご愛嬌。 とにかく、ちょっとだけ女としてのプライドが傷ついたアリスだった。 「おや、もうこんな時間か」 気付けば日はすっかり落ち、辺りはすっかり闇の帳が落ちていた。 「普段なら帰るよう促すところだが……」 そう言いつつ立ち上がった霖之助は、ちょっと待っていたまえと言い残して奥に引っ込む。 戻ってきた霖之助の手には酒瓶とお猪口が2つ握られていた。 「これは霊夢の略奪から運よく逃れた一品でね。折角のお祝いだし、今日飲んでしまおう」 霖之助としても、完成した人形を褒めるだけでは物足りない。 優秀な弟子を労うべく、縁側に出て月見酒と洒落込むことになった。 「僕はこうして月を肴にちびちびとやるのが好きでね。 魔理沙なんかは『酒は豪快に飲んで豪快に酔うもんだぜ』などと言って風情を楽しむということをしない。 その点、君は繊細さで言うと魔理沙とは比べ物にならないし、きっと理解してくれると思うんだが」 乾杯、と杯を軽く合わせ、注がれた酒を少し口に含む。 普段余り酒を飲まないアリスでも、なんとなく良い酒なのだろうとわかった。 「これって結構いいお酒じゃないの? 私より他にお酒の事がよくわかる相手がいると思うんだけど」 「構わないさ。君は僕にとっていわば弟子のようなものだ。頑張った弟子にご褒美を上げるのも師匠の義務というものだよ」 「そう、そこまで言われちゃ断るのも失礼ね。ありがたく頂くわ」 先ほどまでとは打って変わってほとんど会話はなかったが、アリスも霖之助もこの雰囲気を楽しんでいた。 杯を開けては互いに酒を注ぐ。月を眺め、風の音を聞き、ちびりちびりと酒を味わう。 たしかにこれは良い。じんわりとなんともいえない心地よさが広がっていく。 「霖之助さん」 「うん?」 「ありがとう。今日は最高の一日だわ」 月を眺めながらそうささやく。 白い肌は酒のせいかうっすらと上気し、月明かりを受けて神秘的なまでに美しい。 そして何よりも、その微笑みがとても綺麗で、思わず我を忘れて見とれていた。 (参ったな・・・) 自分は当の昔に枯れ果てている。そう思っていたが、 (僕の中にも、まだ男としての感性が残っていたとはね・・・) そんなことは、自分の勝手な思い込みに過ぎなかったようだ。 前の話へ 次の話へ
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《森近 霖之助》 No.1927 Character <第二十弾> GRAZE(2)/NODE(5)/COST(2) 種族:人間/妖怪 (自動γ): 〔あなた〕は自分のターン中にコマンドカードをプレイした場合、ターン終了時に1ドローする。この効果は重複しない。 攻撃力(5)/耐久力(3) 「記念に使わないで取っておいてやろうかな」 Illustration:もちぬ コメント 収録 第二十弾 関連 森近 霖之助/1弾 森近 霖之助/7弾 森近 霖之助/12弾 森近 霖之助/16弾 森近 霖之助/20弾
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【子煩悩】前編 ある日のこと。 いつもどおりの時間に起床し、いつもの服を着込み、いつものやりかたで洗顔を済ませ、いつもの決まった朝食を作り始めた霖之助。 ただ一ついつもと違っていたのは、店の外から妙な音が聞こえたことだった。 「―――! ―――!」 音と言うよりは何かの泣き声のようだ。 妖怪に襲われた人間か、逆に退治されかかった妖怪か。 なんにせよ、店の前で放置するわけにも行かない。 用心のために草薙の剣を携え、霊夢が置いていった札を服に仕込んだ霖之助は、店の戸をそっと開けて様子を伺った。 泣き声はやや大きくなったが、特に何かが居るわけではない。 物陰から襲い掛かられる可能性を考慮し、慎重に戸を開けていくと、その戸に何かが触れたような手ごたえがあった。 そろそろと戸の向こう側を覗き込むと、そこには一抱えもある竹の籠。 音はその籠の中から聞こえているらしい。 意を決して中を覗き込んだ霖之助が見たものは、 霖之助そっくりの、銀髪を持った幼子だった。 「さて……これは一体どうしたものだろうね」 とりあえず子供は霖之助が抱きかかえると泣き止んだ。今は服の胸元をがっしりつかんで涙目だ。 年のころは大体1~2歳というところか。話しかけても返事はない。 そんなことより問題はその子の服にはさまれていた置手紙。 「責任を取ってください……と言われてもなあ」 とりあえず霖之助に思い当たる節はない。 落ち着いたら慧音のところでも訪ねて、このくらいの年の子がいる家はないか聞こうと決めたその時、 「こんにちはー! 今日も元気に文文……ええええええええええええええええええええええええええ!?」 「……世にも奇妙な反応をどうもありがとう」 厄介な相手が来た、とため息をつく霖之助。 この状況を見られて厄介なことにならない相手のほうが多いのだが、まあそれはさておいて。 状況を説明しようとした霖之助だったが、 「り……」 「り?」 「霖之助さんの不潔ーーーーー!」 説明する暇もあればこそ、絶叫と共に文は飛び去っていってしまった。 ああ……本当に厄介なことになるなあ、と今後の展開を予想しつつ、再び泣き出した子供をあやす霖之助だった。 それから一時間ほど後。 あまり広くない香霖堂の店内には、非常に大勢の女性たちが集まっていた。 霊夢、魔理沙、美鈴、慧音、妹紅、紫、藍、橙、アリス、永琳、鈴仙、文、妖夢、幽々子、映姫、小町、ミスティア、リグル、チルノ、ルーミア、早苗、などなど。 最初はそれぞれが言いたいことを言っていたため、想像を絶する騒がしさだった。 責任とはどういうことだ。 いつの間にこんなことになった。 母親は誰だ。 裏切り者。 自分というものがありながら。 気のある振りをしてもてあそんだのか。 一人一人なだめつつ、なんとか事情を説明しようとする霖之助だが、誰一人として言うことを聞こうとしない。 誰かに返事をしようとすれば他の誰かが詰問してくる無間地獄。 「だからさっきから言っているように……」 ほとほと弱り果てた霖之助だが、何か服の胸元がやたら突っ張っていることに気付く。 見ると、抱いていた子供は好き放題わめき散らす彼女たちに怯え、泣くこともできず必死に霖之助にしがみついて震えていた。 そんな子供にはお構いなしに捲くし立てる彼女たち。 そして、 ブチ 「いい加減にしろ!!!!!」 ついに堪忍袋の緒が切れた。 思わずカウンターの上にバァン! と拳を叩きつける霖之助。 かつてないほど怒り狂う霖之助に、女性陣の声はぴたっ、と止まり、殺意すら感じさせる目を見て一気に血の気が引いていった。 そんな中、一足先に慧音が我を取り戻し、何とか場を収めようと声をかけた。 「お、落ち着け霖之助。確かに私たちも悪かった。すまない、このとおりだ。 みんな反省しているし、謝るから事情を話してもらえないか?」 その言葉を受けて、次々に「ごめんなさい!」と頭を下げる面々。 ふーっ、と一息ついて子供の背中を優しくさすり、霖之助も落ち着きを取り戻す。 その後は慧音がまとめ役として話を進め、今朝の経緯をようやく伝えることができた。 「それにしてもそっくりだな……」 泣いているときには気付かなかったが、目と言い口元といい、霖之助がそのまま小さくなったような顔をしている。 「名前はわからないのか?」 「僕の能力は生物には効かないよ。 何度も聞いては見たが、こちらの言うことはなんとなくわかっても言葉はほとんどしゃべれないようだね。 困ったような顔で見上げてくるばかりさ」 「さしあたって呼び方を決めるか……たしか男の子だったな」 「ああ」 それを聞いてここぞとばかりに主張する女性たち。 「ここは紫霖(ゆうり)でしょう」 「そんなみょうちきりんな名前聞いたことないぜ。魔霖之助(まりのすけ)でどうだ」 「露骨過ぎるわよあんたら。霊璽(れいじ)なんか響きが良くていいんじゃない?」 「いやいや、ここは霖音(りんね)が……」 「輪廻なんて縁起でもない。霖紅(りこう)とか、利口と掛かってていいだろ?」 「あ、あの、鈴霖(れいり)は……」 「美健(メイジェン)がいいですよ! 美しく健康的ってことで!」 「あややや、霖丸(りんまる)を譲るわけにはいきませんよ!」 「霖妖(りよう)!」 「アルス!」 「リ、リドル!」 「ルーミー!」 「……!」 「……!」 紆余曲折の後。 「……無難に霖太郎(りんたろう)で異論はないな?」 「僕の名にちなんだ名前にするのはやめて欲しいんだが……」 とりあえず呼び名は決まったようだ。 場は収まったものの、霖太郎(仮)は知らない人間(ほぼ人外だが)に囲まれて怖いのか、今でも霖之助の胸元にしがみついてこちらを伺っている。 「そんなに怖がらなくてもいいんだがなあ。ほれ、いないいない~~~ばぁ!」 とりあえず笑わせようとする魔理沙だが、 「……ふぇ」 なぜか泣き出しそうになったため、霖之助が慌ててなだめる。 一方の魔理沙は相当ショックだったらしく、白くなってヒビが入っていた。 「あんたは遠慮がなさ過ぎるのよ……」 と、今度はアリスが上海を操作する。そっと目の高さをあわせた上海を見る霖太郎(仮)。 「コンニチハー」 「……?」 「ヨロシクー」 「ほら霖太郎。この子は上海と言うんだ」 どうやら興味を持ってくれたらしく、目を輝かせて見ている。 「ミテテー」 踊り出す上海。 ミスティアが踊りに合わせて歌を歌うと、徐々に霖太郎(仮)も楽しくなってきたらしい。 きゃっきゃと笑う霖太郎(仮)に、集まった女性たちも顔が緩む。 「可愛いなあ……」 「本当に可愛い……」 「霖之助さんも小さい頃はこうだったのかなあ?」 「ああ、見てみたかったなあ……」 「それにしても……」 「「「「「「「「「可愛い……!!!」」」」」」」」」 既にみな霖太郎(喜)にメロメロだった。 この後、霖之助一人では大変だからということで、慧音が香霖堂に残って霖太郎(笑顔)の面倒を見ると言い出した。 当然我も我もと言い争う女性たちだったが、その様子を見て怖がる霖太郎(涙目)。 再び霖之助の目がきつくなったため、全員即座に意見を取り下げる。 結局霖之助が何とかすると言うことでこの場は収まり、皆それぞれの場所へ帰っていくのだった。 ちなみに慧音が言うには、里に銀髪の子供はいないらしい。 「はあ……」 嵐が過ぎ、静けさを取り戻した店内で霖之助は息をつく。 どっと疲れが出てきたのを感じていると、霖太郎(心配顔)が顔を撫でてきた。 どうやら慰めてくれているらしい。そんな霖太郎(一生懸命)の姿に笑みがこぼれる霖之助。 そのとき、くぅ、と言う音が聞こえた。そういえば朝からまだ何も食べていない。 「きみは何なら食べられるんだろうね……」 霖太郎(空腹)に話しかけても、まんま、としか言わない。 さっきまで何も言わなかったのは泣いたり怖がったりしていたからのようだ。 とりあえず離乳食が必要な年ではなさそうだったため、朝食用の魚を焼いて一緒に食べることにした。 食事の用意が整った。 霖太郎(夢中)はまだ箸を使うには早そうだったので、さじを使わせることにした。 魚は霖之助が身をほぐしてから御飯に混ぜてあり、小骨などは一切入っていない。 栄養のバランスも子供には大事なので、野菜が柔らかくなるまで煮込んだ味噌汁も付けておいた。当然温度も調節済み。 濃い味付けもよろしくないため、非常に薄味で素材の味を生かすように作ってある。 「おいしいかい?」 返事は期待できないだろうが、子供には極力話しかけるのが良いと何かで読んだことがある。 霖太郎(至福)は何を言われたかはわからずとも話しかけられたのが嬉しいらしく、さじを使う手を止めてにぱっと笑ってくれた。 「おいしいみたいだね。いっぱい食べるといい」 これだけ喜んでくれているなら、頑張った甲斐があったというもの。霖之助も自分の食事を再開する。 霖太郎はまだ自分で食べることに完全には慣れていないらしく、御飯をポロポロこぼしていたが、 予想していた霖之助が前掛けを付けさせているので問題ない。 「もういいのかい? それじゃあ、手を合わせて。そうそう。せえの、ごちそうさまでした!」 「……たっ!」 わけはわからずともなんとか真似をしようとする霖太郎が微笑ましくて仕方ない。 「じゃあ僕は食器を片付けてくるから、ちょっと待っててくれるかい?」 またにこにこと笑って、あーい、などと返事をする霖太郎。 だが、霖之助がどこかに行くとは思っていなかったらしく、立ち上がった霖之助が背を向けると、とたんに不安そうな顔になった。 うー、あー、と悲しそうな声を聞いた霖之助が振り返ると、両手をこちらに突き出した霖太郎が駆け寄って足にかじりついてきた。 嬉しいような困ったような複雑な気分で引き離そうとするが、手を離したら霖之助がいなくなると思っているのか、霖太郎は一切力を緩めない。 とりあえず食器はその辺において霖太郎を抱きかかえると、霖之助はあるものを探し始めた。 結局、霖太郎は背負い紐でおんぶして連れ歩くことにしたらしい。 背中から手元を覗き込んでいる霖太郎と、良い気分で食器を洗う霖之助。 一人でいるときよりずっと手間がかかって仕方ないが、それが全く嫌ではない。 むしろ、そういう手間が楽しくて仕方ないくらいだ。 「……ふむ、意外と子煩悩らしいな、僕は」 片づけが終わって部屋に戻ると、霖太郎は満腹と疲れのためか、くうくうと寝息を立てていた。 霖之助は布団を敷いて霖太郎を寝かせると、しばらくその寝顔を優しく見つめていた。 後編へ
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ゆらゆらと世界が回る。 くるくると色が踊りだす。 世界は華。 華は世界。 ちいさな小さな万華鏡。 そこは色彩の楽園。 嗚呼、嗚呼、美しいかな。 万の華よ、咲き誇れ。 枯れることなき花々よ、狂い咲け。 万華鏡 万の華よ 咲き誇れ くるり、くるりと手を回す。 目に映る景色が変わりだす。 鮮やかな赤の色彩が、より眩い紅になり、そうかと思えば深い藍となる。 世界は変わる。 手を廻す、ただその行為だけで世界は変わる。 それが酷く楽しいものだと思えた。 「あら、珍しいものを覗き込んでらっしゃるわね」 「ん?」 不意に聞きなれない声がして、霖之助はそれから目を外した。 場所は香霖堂。 目に余る品々が一定の秩序とある種の無造作を持って並べられた古道具屋。 幻想郷には珍しい外の品も混じった混沌めいた空間。 そこの主である霖之助の前に、一人の日傘を持った女が立っていた。 「おや、ずいぶんと珍しい客だね」 口調は冷静に、けれどどこか声は冷たく。 霖之助はどこか引き攣ったような表情を理解しつつ、その女――八雲 紫に声をかけた。 「買出しであれ、売りつけであれ、普段ならば藍にでも任せるのが常ではなかったのかな?」 彼女の式である九尾の狐の名を出す霖之助。 彼女ならまだいい。けれど、霖之助は目の前にいる紫を酷く苦手としていた。 そんな彼の心境をまるで読み取ったかのように、紫は手を口に当てて優雅に微笑む。 「ふふふ、時には私も気まぐれが働きますわ。女ですもの」 女の行動に口を挟むなと、軽く言外に匂わされているような気がした。 多分それは被害妄想なのだろうが、在ってそうで恐ろしい。 「そうかね」 ふーと軽くため息を付き、霖之助は手に持つ、先ほどまで覗き込んでいたそれを机の上に置いた。 「それで、何をお探しなのかな?」 さっさと用件を済ませて帰ってもらおう、そう考えての発言。 けれど、紫はそうと感じさせぬほど自然な足取りで霖之助に近づき、その前の机に置かれたそれを手に取った。 「――万華鏡、ですわね」 「百色眼鏡ともいうらしいが、どちらも正しいだろう」 霖之助が覗き込んでいたそれは万華鏡だった。 質素な意匠が掘り込まれた細長い筒、その尖端を先ほどまで彼は覗き込んでいたのだ。 「不思議ですわね、貴方にはそんな趣味があったかしら?」 可愛らしく首を傾げる紫。 そんな彼女に霖之助は心の中で苦笑を浮かべると、彼女の疑問に答えた。 「いや、これは無縁塚で拾ったものでね」 霖之助が商品を仕入れる先――外の世界のものが流れ着く場所の名前を告げた。 「なるほど、万華鏡も忘れられつつあるのね」 「そのようだね」 万華鏡の歴史は古い。 生まれは外国であるスコットランドだが、江戸時代の日本にも輸入され、博麗大結界が張られる前に神隠しと呼ばれる幻想郷への迷い人の手によって数本持ち込まれた。 多少材料集めに手間が掛かるが、素人でも拙いものであれば作成は可能であり、人里でもたまに見かける程度には流通している。 幻想郷にとっての当たり前が、外では幻想となった。 それがどうにも寂しいものだと、霖之助は常にない情緒感をもっていた。 「寂しいですわね」 まるで紫は霖之助の心情を代弁するかのように呟く。 「そうかもしれないね。僕には想像するしか方法がないが、外の世界は万華鏡を気にする必要もないほど美しいものに溢れているのかもしれない」 覗き込めば垣間見える幻想的な光景。 夢幻とも思える万華鏡の色々。 その美しさを外の人間はいらないと判断したのだろうか。 外の世界を知っている紫ならば、どれだけ進んだ世界なのか、美しいものに溢れた世界なのか知っているだろう。 けれど、霖之助はそれを想像するしか手段はなく、今は想像するだけ良しとする。 いつかは外に出て、知識を身に付けたいと願っている彼だが、彼にはまだまだ呆れるほどの時間があるのだから。 「そうかしら」 けれど、紫は霖之助の想像を否定する。 「きっと人は忘れているだけですわ」 ゆるゆると言葉が紡がれる。 妖怪の賢者である八雲 紫はどこか悲しげで、皮肉げに言葉を大気に紡ぎ上げる。 「たった小さな一本の筒を手にとって、覗きこむことを忘れているだけですわ。とても簡単なことなのに」 「そうかな?」 「そうですわよ。人は決して光を忘れることなど出来ないのだから」 ニコリと微笑んで、紫は不意に手に持っていた万華鏡を目に当てる。 くるりくるりとどこか妖艶な手つきで筒を廻し、艶のある笑みを浮かべる。 「あらあら、赤か紅、紅から藍、藍から翡翠、翡翠から紫と綺麗ですわね」 にこやかに、華のように、どこか無垢な少女のように笑みが咲き誇る。 「万の華を咲き誇る鏡とは上手いことを言ったものだと思いません?」 「そうだね」 万の華を映す鏡と書いて万華鏡。 誰が思いついたのか知らないけれど、とても正しく、とても幻想的な名前だった。 「まあ、それは――女も同じことですけれど」 「え?」 「あら。知らないのかしら? 女は万華鏡と同じですわ」 覗きこむ目を外し、紫はニッコリと笑みを零す。 どこか妖艶で、見るものを蠱惑するような美しい笑みを。 「楽しければ向日葵のように笑みを浮かべ、悲しければ雨のように涙を流し、怒れる時は鬼のように恐ろしく、喜ぶ時は雪溶きのように輝くもの。 感情という光を反射し、万にも届く、夢幻の華を咲き誇る」 ゆるゆると吐き出される言葉。 同じ顔のはずなのに、まるで別人のように、けれどどこか同じ輝きを帯びて。 霖之助はまるで魅入られたように、紫の顔を、目を見ていた。 「憶えておくべきですわ。とても大切なことですから」 そう告げて、紫は手に持っていた万華鏡を霖之助に差し出した。 「あ、ああ」 それを霖之助は受け取る。 同時に発動する能力――名前は百色眼鏡或いは万華鏡 用途は魅了されること。 まったくもって、目の前の女性のようだと霖之助は思った。 「それでは、そろそろ私は失礼します」 「え?」 「欲しいものがなかったですから」 ニコリと笑みで冷やかすだけだと告げて、紫はゆっくりと霖之助に顔を近づけた。 「ん?」 湿った音がした。 霖之助の頬に口付けがされていた。 「これは、いいものを見せてくださったお礼ですわ」 呆然とした表情を浮かべる霖之助に、余裕を持った紫はするりと抜け出るようにその場を離れる。 「それではごきげんよう。また縁がありましたら、お会いしましょう」 子供のように無造作に手を振って、紫の姿が瞬くように消える。 彼女の能力――境界を操る程度の能力で開いた隙間でも使ったのだろう。 「……やれやれ」 姿が消えたことを確認し、数秒後に霖之助は息を吐いた。 蠱惑し、魅了し、どこまでも朴念とした霖之助の心をかき乱す女性。 八雲 紫。 「やはり、彼女は苦手だ」 見惚れればきっと抜けられなくなる。 まるで万華鏡の世界のように。 口付けられた頬だけが、彼女の存在を示すようにどこか熱かった。 おまけ(カリスマブレイク警報発令中。素敵な紫のままでいたければ、見ないほうがいいです) 「藍様ー」 「なんだい、橙?」 「お部屋のお掃除してたら、こんなのが落ちてましたー」 「ん?」 橙が藍に見せたのは一冊のノート。 幻想郷のものではない、外の世界による紙の印刷物。 その表紙には『カンペノート』と書かれていた。 「ずいぶんと薄いが、これは本だろうか?」 紫様のものかな? と藍は思いながら、パラリと開いた。 そして、一番新しい書き込みがされたページを見る。 『 今日の霖之助さん誘惑台詞 1 「ふふふ、時には私も気まぐれが働きますわ。女ですもの」 ここで自分が女だということをアピール。妖艶な女ということを強調するわ! 2 「あら。知らないのかしら? 女は万華鏡と同じですわ」 霖之助さんが万華鏡を拾ったみたい、これは年長者として素敵台詞の出番ね。 3 「楽しければ向日葵のように笑みを浮かべ、悲しければ雨のように涙を(ry」 我ながら素敵な台詞。こんな台詞を吐かれたら、多分私だったら一気に恋に落ちるわ。 昔ポエムノートを書いていた日々を思い出すわ~。 』 などなど、複数の書き込みがあった。 そして、最後に「今日はなんかの理由を付けて、霖之助さんの頬にキスするの! 女は度胸よ! は、恥ずかしいけれど……」 と書かれていた。 「……」 「藍様?」 「橙。これをおいてあった場所に戻しておいてくれないかな?」 「え? でも、お部屋のお掃除してたら床に落ちていた」 「じゃあ、そこに戻しておこう。これは紫様のものだからね、なくしたと勘違いしたらきっとお困りだ」 「藍様がそういうのならー」 戻してくるーと橙がテコテコとノートを持って歩き出す。 藍はその背を微笑ましく見ながら――ため息を吐いた。 ハァッと。 どこかテンションがおかしい八雲 紫が帰ってくるのは五分後のことだった。
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香林堂は今日も平和が続いていた。 店主である森近霖之助が住み込みで雇った外来人の青年〇〇が一癖も二癖もある客を気持ち良い接客をするからだ。 だが、最近の霖之助の表情は冴えない。 客には笑顔で挨拶をするが、顔は引き攣り冷や汗がダラダと出る。 それは何故か? 〇〇が接客をしている幻想郷の重鎮達が、〇〇目当てでおっかないからだ。 人妖、神と問わずに気さくに接する〇〇を彼女達は伴侶として迎え入れたくほぼ毎日、顔を出していた。 主な客は博麗の巫女、白黒の魔法使い、紅魔館のメイド長、妖怪の山にある神社の現人神と二柱の神、管理者である八雲の主従に、白玉楼の主従、永遠亭の薬師と姫の主従、人里の守護者。 さらには最近から人里にある寺の毘沙門天代理が無くした宝塔を〇〇が拾い店に並べようと、すんでの所で寺の住職が現れ事情を説明され、〇〇は霖之助に了解を取り快く返したことにより客が増えた。 おまけに〇〇が、ある意味【思わせ振り】の態度をするから霖之助には厄介だった。 〇〇は、よく外界の歌を口ずさむが、その歌の歌詞をかなり前向きに捉える彼女達をさらに焚き付ける。 余計な事はしたくない霖之助だが、一度だけ親切心で「僕は静かな方が好きだから歌うのは、ちょっとね…。」と忠告し、〇〇が歌わなくなると霖之助が人里へ食料を買い出しに行く途中で、弾幕勝負の流れ弾が「たまたま偶然」擦める事が多々あった。 以来、〇〇が歌を口ずさむのを止めなくなった。 そして、霖之助が伝票整理をしている最中に今日も〇〇は店先を箒で掃除をしながら歌を口ずさんでいるのが聞こえて来た。 〇〇「おねえさん…。」 【あぁアナタが欲しいよ、こっち向いて。さぁ踊ろうよ、心は病気がちさ。 この世界、時には素敵さ。 生まれて来た証しよ、ご機嫌よう。 「愛とはアナタため」だとか言ったら疑われるけど、がんばっちゃうもんね。】 〇〇「えっと、塵取り塵取りは?…あったあった。」 【今日も明日も、お元気でLOVE LOVE しよう。】 〇〇「これで良し。霖之助さん、店先の掃除終わりました。」 霖之助「あ…あぁ、ご苦労様〇〇君。」 やはり顔色が冴えない霖之助。それもその筈、〇〇の歌を何かしら能力や直接見ていた重鎮の客達が力を解放し店へ近づいて来る御蔭で森の木々が騒ぎ獣は逃げ、霖之助本人も気圧されからだ。 今の所、拮抗状態が続いているが何処かしらが弾幕勝負で灰燼になるのである。 霖之助(嗚呼…いっその事、〇〇君を誰かに差し出して楽になるけど多方面から恨まれるだろうし…。やはり本人達で解決してもらおう。)「…………店への被害は勘弁願いたいがね。」 〇〇「?何か言いましたか霖之助さん?…あ、いらっしゃいませ。」 入って来た客を見て「今日も平和が続きますように。」そう切実に願う霖之助だった。
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「人形劇を手伝って欲しいんだけど」 【嘘から出た真】 いきなり本題を切り出すという行為は、話術としては褒められたものではない。 それでも、主導権を握るという意味ではまずまず有効だ。 切り出されたほうは、相手の言ったことを理解し、その背景を推察し、つまるところ何を要求しているのか予想した上で返答しなければならない。 この作業が終わらないうちに次々と言葉を放たれればどうなるか。 大概の人間は混乱するはずである。 そのように有利な立場にいるにもかかわらず、目の前の少女は最初の一言を発したまま沈黙を保っていた。 どうやら、相当気合を入れてきたか、もしくは極度に緊張していたようだ。二の句を告げることも忘れるほどに。 霖之助はたっぷり時間をかけてアリスの言葉を咀嚼し、最も可能性が高いと思われる仮説を立て、これを証明すべく質問することにした。 「それは今度の祭りでの話かい?」 「ええ、どうしても霖之助さんの協力が必要なの」 どうやら仮説は真理の一片を捉えていたらしい。要はアリスが祭りで披露している人形劇を手伝えということだ。 すがるようなアリスの顔に、ふむ、とあごに手をやって考える。 魔理沙や霊夢とは違い、こうして真摯に頼みに来るあたりがアリスの好ましいところだ。 また、普段見せるそっけない言動の割りに、アリスという少女は人が嫌がることはほとんどしないし、なんだかんだで面倒見もいい。 そんなアリスの頼みとなれば、ここは一つ受けてやろうという気になるのが人情と言うものだ。 北風と太陽の童話を思い出しつつ、霖之助は快く協力を申し出た。 「僕に何が出来るのかはわからないが、君の頼みなら断るのも忍びない。喜んで手を貸すとしよう」 「そ、そう……ありがと」 『君の頼みなら』、『喜んで』と言う言葉に反応するアリス。 その頭は、裏の意味を探ろうとフル回転を始めた。 今の言葉はどういう意味だ? 霖之助にとって自分は特別なのだということか? 突飛な想像だが、あながち間違っていないかもしれない。 この男がここまで言うのだ。なにかよほどの理由があると考えたほうが自然だろう。 もしかしたら好意を抱いてくれているのかもしれない。霖之助が、この自分に。 そう言えば、今までなんとも思っていなかったけど、見た目も悪くないし性格も……。 などと、霖之助が段々と魅力的な男性に思えてくる。 現金な自分に呆れつつも、アリスはなんとなく嬉しくてもじもじしていた。 それに対し、もっと喜んでもらえると思っていた霖之助は首をかしげていたが。 「それで、具体的には何をしたらいいんだい? 正直僕は人形繰りに関しては門外漢もいいところなんだが」 「え、ああ、まだ説明してなかったわね。ごめんなさい」 霖之助の声で我に返る。 冷静になると、さっきまでの自分が恥ずかしい。 たった一言好意的な言葉をかけられたくらいでなにを舞い上がっていたのか。 先ほどとは違った意味で頬を染めつつ、アリスは霖之助の質問に答えた。 「人形は操れなくても大丈夫よ。欲しいのは霖之助さんの声だから」 別のことに意識を割いているせいか、今日のアリスは言葉が足りなくていけない。 またしても頭に『?』を浮かべる霖之助を見て、アリスは今度やる人形劇には声を当てるつもりでいるのだと説明した。 男役も自分で声を当てようとはしたのだが、どうにも画竜点睛を欠くような気がしたので、こうして男の霖之助に頼みに来たとのことだ。 なんとか納得することが出来た霖之助は、まず今回の演題がどういう物なのかあらすじについて尋ねる。 アリスが語ったあらすじは以下の通りである。 ある国の王宮のお抱え魔法使いが王女と恋に落ちた。 身分の違いから周りに反対され、密かに逢瀬を重ねるもこれが発覚。 2人で駆け落ちし、国からの追っ手を含め様々な困難に立ち向かう。 全ての困難を乗り越えた2人はやがて小さな村に辿り着き、身分を隠していつまでも幸せに暮らした。 「ふむ、身分違いの恋に襲い掛かる困難、そしてハッピーエンドか。 使い古されている内容だが、使い古されるということはそれほど人の心を揺さぶるということだろうし、悪くはないな」 「まあ、奇抜さはないのは認めるわ。 でも私の持ち味はストーリーじゃないもの。ここは奇をてらわず王道で行くのが無難でしょ?」 「それには同意しておこう。それで、僕にこの魔法使い役をやれ、と」 「ええ。出来れば王様とか追っ手の騎士もお願いしたいんだけど、そこまでは言わないわ。 ナレーションでなんとか誤魔化せるしね。 それじゃあ台本を渡しておくわ。明日から稽古を始めるからしっかり覚えて頂戴」 どうやら霖之助が承諾することまで予想済みだったようだ。 まあ、たまには物語の傍観者をやめて登場人物になるのも悪くはない。 その日、霖之助は夜遅くまで台詞練習に没頭していた。 そして次の日。 「おはよう、霖之助さん。セリフは覚えられた?」 「大体はね。あとはやりながら覚えたほうが早いと思うんだが」 「あら、頼もしいわね。それじゃあ早速始めましょうか」 まずは人形抜きでセリフの確認と演技の稽古をする。 これは打ち合わせをした際、とにかくここさえしっかりしておけばなんとかなると言う結論に至ったためだ。 最悪セリフ練習しかできなかったとしても、アリスならぶっつけ本番で人形の動きを演技に合わせられるだろう。 そんなこんなで稽古は続き、今はこっそり落ち合った2人が愛を語る場面を練習している。 「どうして私は王女になど生まれてきたのかしら? ただの町娘に生まれていれば、身分の差に苦しむことなんかなかったのに」 「ですが、もしあなたが王女として生まれていなければ、私とこうして出会うこともなかったかも知れません。 ならば今はこうして、互いに愛する人と出会えた幸せを喜びましょう」 「もう、2人でいるときは敬語なんてやめてっていってるじゃない」 「おっと、これはすまないね。ついいつもの癖が出たようだ」 感情移入しやすくするため、台本に書かれている2人の口調は霖之助とアリスそのまんまになっている。 もちろん2人きりの場面に限ってだが。 そんなアリスの狙い通り、霖之助はかなり演技に熱が入っている。が、今回は入りすぎたことが問題になった。 そう、人形も置かずに向かい合って演技をしているため、霖之助とアリスが本気で愛を語りあっているような状況になっていたのだ。 アリスもなんだかんだ言って女の子。こういう場面はかなり気合を入れて書いているし、アリス本人の憧れるシチュエーションやセリフも存分に盛り込んである。 そんな"アリスが言って欲しい愛の言葉"を、霖之助が真剣そのものの顔で語ってくるのだ。おまけに今は香霖堂に2人きり。 恥ずかしいようなくすぐったいような思いで徐々に頬が熱くなるアリス。 一方、そんなことは微塵も意識していない様子で演技に没頭する霖之助。 演技に集中するのは悪いことではない。 それでも、自分だって面と向かって愛の言葉を投げかけているのだ。もう少し照れたりしてもいいではないか。 やはり霖之助に女として見られてはいないのだろうかと、少しだけ悲しくなるアリス。 だが、そんな悲しみなど吹き飛ばすような事態が起こった。それは、この場面も終わりに近づいたときのこと。 「そろそろ戻るとしよう。あまり長く抜け出していては怪しまれるからね」 「そうね……。どうして楽しい時間はすぐ終わってしまうのかしら。 ねえ、別れる前にもう一度聞かせてくれる? 私のことを愛してるって。 言われなくてもわかってるつもりだけど、あなたの口から聞いておかないと不安で仕方なくなってしまうもの」 「もちろんだとも。……愛しているよ、アリス。この世界の誰よりも」 「……え?」 「……あ」 いつの間にか劇の役と現実の自分が混ざってしまったらしく、王女の名前を呼ぶところでアリスの名前を呼んでしまった霖之助。 思わぬ不意打ちに、アリスは真っ赤になって口をパクパクさせている。 一方の霖之助も、あんまりといえばあんまりなミスに気まずくて仕方ない。 第一、これでは隠していた想いがつい口をついて出てしまったようではないか。 「す、すまない。ずっと君を見て稽古していたものだから、つい」 とにかくこの空気を何とかしようと声をかける霖之助。 アリスもこのままでは不味いと気が付き、なんとか事態の収拾をつけるべく霖之助の言葉に乗ることにした。 「ま、全く仕方ないわね。本番でやったら承知しないわよ」 「ああ、気をつけるよ」 どうにか落ち着くことは出来たようだが、こんな心境で稽古を続けられるはずもない。 霖之助は慣れていないから疲れたのだろう、ということで今日の稽古は終了となった。 2人ともこれが建前なのはわかっているが、わざわざそこを指摘して稽古を再開する理由もない。 明日また同じ時間に稽古を再開するということにして、アリスは自宅へと戻っていった。 その帰り道、アリスは帰り道を歩きながらため息を吐く。 「見ていたらつい、か」 やっぱり意識しすぎなのだろうか。ホッとしたような残念なような不思議な気持ちだ。 霖之助という協力者を得て、祭りの準備はとても順調だというのに、何か心が晴れない。 気が付けば霖之助のことばかり考えている自分に、アリスは顔をパシンと叩く。 そうだ、とにかく今は劇をやり遂げよう。自分が霖之助をどう思っているのかなんてその後で考えればいい。 「さあ、明日も頑張るとしますか!」 おー、とアリスは右手を振り上げた。 一方、アリスの帰った香霖堂にて、霖之助は最後にやらかしたミスについて考えていた。 なぜ自分はあそこでアリスの名を呼んだのか 目の前にアリスがいたから? 違う。アリスにはああ言ったが、どうも他に理由がある気がしてならない。 その違和感が気になって考えていると、一つの可能性に思い当たった。 「気付かぬうちにアリスに惹かれていた……か?」 流石にそれはない。確かに目を閉じればアリスの顔が浮かぶが、これは今日ずっと2人で稽古をしていたからだ。そうに決まっている。 ぶんぶん、と頭を振り、今日の自分はどこかおかしいのだと結論付けた霖之助は、普段より早めに就寝することにした。 そんなこんなで稽古は続き、ついに迎えた祭り当日。 生まれてこの方味わったことのない濃密な特訓を乗り越えた2人は、意気揚々と道の小脇にセッティングを進めた。 結果としては大成功。あまりの人だかりが通行の妨げになるほどだ。 観客たちの中には、感動して涙すら流しているものまでいる。 また、劇が終わった後は次々にアリスや霖之助の手をとり、その想いをぶつけてくれた。 「感動した!」 「いい話をありがとう!」 「また次の祭りでもお願いします!」 「辛い思いをしてきたんだねえ」 「おめでとう! お幸せに!」 どう聞いても劇の感想ではない発言も紛れ込んでいたが、とにかく返事を返すのに必死な霖之助たちは気付かない。 疲れ果てながらもなんとか香霖堂まで荷物を運んだ2人は、そのまま奥の部屋で眠りに付くのだった。 数日後、 『発覚! アリス=マーガトロイドと森近霖之助に隠された波乱万丈の過去!』 なる見出しの新聞が大量に発行される。 どうやら人里では、あの人形劇が2人の過去を忠実に再現したものということになっているらしい。 そこには連れ添って香霖堂に戻る2人の写真もあり、アリスが朝帰りした所も見ていたと鴉天狗が証言している。 これを見た幻想郷の女性陣はアリスと霖之助を尋問すべく結託。 逃げ回る2人の間にはいつしか愛情が芽生えたりもするのだが、それはまあ別のお話。
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《森近 霖之助/Morichika Rinnosuke》 リバース効果モンスター 星3/地属性/半妖族/ATK1000/DEF1000 このカードは攻撃宣言を行うことが出来ない。 このカードが反転召喚に成功した時、次の効果から選んで発動することが出来る。 ●自分の墓地に存在する魔法・罠カードを1枚相手に見せずに手札に戻すことが出来る。 ●相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚のコントロールを自分のフィールド上に移すことが出来る。 このカードは1ターンに1度裏守備表示にすることが出来る。 名前 コメント
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ゆかりんとは八雲紫の愛称であるが、しばしば八雲紫とは別の存在とも認識される。 この項では後者について解説する。 八雲紫は東方作品に置いて非常に重要な地位を持つ存在であり、それ故魅力的なキャラクターであるのだが、 その存在は不定なもので、彼女を彼女らしく描き切る作品はごく稀である。 そのため、その立場と万能性を用いて扱いようにアレンジされてしまうことが多い。 主に霖之助スレで描写される内容としては ・霖之助が好きで好きでたまらない(この設定はしばしば他のキャラにも使われる) ・ストーカー・覗きは当たり前 ・ありとあらゆる手で霖之助を自分のものにすべく行動する。時には痛い行動も ・ただし強制的に霖之助を自分のものにしようという手段は用いない。 ・賢者というには頭が弱く、諦めが悪い。 どっから見ても別人でしかないが、東方自体が描くのが難しいキャラクターばかりなのである意味仕方ないといえば仕方ない。 とはいえ聖典を見た人の反応から察しても不思議な存在である彼女の人気は高い。 安易に「ゆかりん」の出番を増やすのではなく「八雲紫」を意識して考えるのもキャラ愛ではないだろうか。
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前の話へ 次の話へ あらすじ 霖之助の協力のもと日本人形を完成させたアリス 次は一人で作ろうと自宅に篭るが、霖之助にフラグを立てられていたため、寂しくなって香霖堂へ。 なんだかんだでめでたく毎日通うことになりました。 スー……、パタン。 霖之助にあてがわれた部屋に荷物を置きにあがったアリス。 廊下から見えないように襖を閉めると、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 畳に腰を下ろして両手を突き、大きく息を吐く。 本来陶磁器のように白い肌は首まで真っ赤に染まっていた。 心臓はここで一生分働きつくしてやると言わんばかりに回転数を上げ、手足はいまだに軽く震えている。 (あれは反則にも程があるわよ……!) 叫びだしたくなるほどに昂ぶる感情を抑え、アリスは先ほどのことを思い出す。 『ありがとう。また来てくれて嬉しいよ』 ただでさえ受け入れられたことが嬉しくて頭が煮立っている所だというのに、そんなことを言われた日にはもう声も出せなくなってしまう。 真っ白な頭の中とは正反対の真っ赤な顔で、カク……カク……と壊れた人形のように首を縦に振り、転びそうになるのを何とかこらえて部屋に辿り着いた。 訝しがられたかも知れないが、取り繕うことなど不可能だ。 スキマと閻魔と花の妖怪と亡霊の姫に同時に喧嘩を売って無傷で生還するくらい無理だ。 霖之助の笑顔が頭から、言葉が耳から離れない。 上海と蓬莱を呼び寄せて力いっぱい抱きしめる。 「~~~~~~~っ」 声にならない叫びと共に畳の上を転げ回るアリス。その顔はこれ以上ないほどにやけまくっている。 来てくれて嬉しい。 来てくれて嬉しい。 来 て く れ て 嬉 し い! それはつまり、霖之助もアリスに会いたかったということだ。 それもあの朴念仁がわざわざ口に出して思いを伝えるほどに。 期待しすぎてはいけないと理性が警鐘を鳴らそうとするが、このくらい自惚れたって構わないだろうと黙らせる。 いつまでも悶え続けるアリスが再び霖之助と顔を合わせられる程に落ち着くのは、相当後になりそうだった。 一方の霖之助は、部屋から聞こえてくる妙な音に首をひねっていた。 前の話へ 次の話へ